2016年3月31日木曜日

平成28年株主総会に向けた留意点

平成28年株主総会に向けて、留意点や検討事項について実務担当者の目線でまとめてみた。「平成26年改正会社法」と「コーポレート・ガバナンスコード(CGコード)」の対応については、主に招集通知作成上の留意点について記載し、その他、平成28年の株主総会で実務担当者として是非押さえておきたいポイントとして「日本版スチュワードシップ・コード」、「ISSのポリシー変更」、「その他の法改正」、「株主総会の実務対応」を項目別にざっくりとまとめた。なお、「社外取締役を置くことが相当でない理由」については、ほとんどの上場会社は対応不要だと思われるし、私の会社も必要ないので記載していない。

(とりあえず会社の経費で購入して手元に置いておきたい3冊)
別冊商事法務№404 株主総会想定問答集〔平成28年版〕
別冊商事法務№406 事業報告記載事項の分析―平成28年1月総会までを踏まえて

さて、平成28年の招集通知作成において最大の検討事項は、事業報告の「対処すべき課題」にCGコードの内容をどれくらい書き込んでいくか、ということだ。法定事項ではない項目のどこを捨て、どこを盛り込んでいくか、また、CGコード対応に伴う記載ボリュームの増加に、範囲が拡大されたWEB開示をどう活用していくかが課題となる。盛り込んでいく際は、株主は何に関心があるのかという意識も大切にしたい(平成27年12月の株主総会ではガバナンスより足下の景気を心配する質問が多かった)。

<平成26年改正会社法対応>


・監査等委員会設置会社
監査等委員会設置会社への移行公表会社は平成28年2月に400社越え。予想以上に大ヒットした。平成28年の株主総会を経て500社程になるのではないかと予想されている。移行しない場合であっても想定問答(なぜ移行しないのか)の対応準備が必要となる。

・WEB開示の範囲拡大
最近では「計算書類の注記表」に加え「株主資本等変動計算書」もウェブ開示している会社が増加してきている。WEB開示の範囲拡大に対応して、開示内容の見直しを行う。なお、東証のHPに紙ベースの招集通知のみ掲載しWEB開示は会社HPにしか掲載していない会社があるが、機関投資家からは不評。WEB開示資料も一本化した招集通知を東証HPに掲載する。

・社外取締役・社外監査役の要件厳格化への対応
社外役員の要件に関する経過措置期間が3月決算会社では平成28年6月総会終了時に満了し、旧要件による社外役員は平成28年定時株主総会終結の時を持って社外性を喪失する。子会社に会社法上の大会社を持ち、社外監査役の兼務状態を解消していない会社は、早々に対応を行う。

・内部統制システムの運用状況の概要の記載
事業報告に内部統制システムの運用状況の概要の記載が必要となった。内容としては、会議体の開催、研修の実施、内部監査部門の活動、規程の制定・改定などの状況を記載する。

・監査役会が会計監査人の報酬等に同意した理由の記載
会計監査人の報酬等の額に対して監査役会が同意した理由を事業報告に記載する。日本監査監査役協会より「改正会社法及び改正法務省令に対する監査役等の実務対応」が開示されている。

・特定完全子会社に関する事項の記載
事業年度末日において最終完全親会社が有する株式の帳簿価額が総資産の5分の1を超えることとなる完全子会社を「特定完全子会社」として事業報告に掲載する。

・連結計算書類の科目表示の変更
連結計算書類の科目において「少数株主持分」から「非支配株主持分」等、表示の改正が行われたので対応する。

・役員選任議案の工夫
役員選任議案における「顔写真」や「抱負」の掲載は機関投資家から好評(らしい)。特に招集通知のカラー化を既に実施又は予定している会社は検討する。

<CGコード対応>


・コーポレート・ガバナンス報告書(CG報告書)の提出時期
平成28年の株主総会(6月)が終了後、CG報告書は「遅滞なく提出」する必要がある。CGコード対応の初回提出時は12月まで時間的余裕があったが、今回からは準備の時間が多くは取れないため、株主総会の準備と並行してCG報告書の読み直しを行う必要がある。

・フルコンプライ率と株主目線
平成27年12月末時点でCGコード73原則を全てコンプライしている会社は11.6%(216社)であった。機関投資家はコンプライ率より中身を重視しているので、フルコンプライしているか否かは、議決権行使に左程影響はないと予想される。しかし、この比率について朝日新聞は「11.6%にとどまる」と書いた。一般株主の目線は朝日新聞に近いものだと思われるので、フルコンプライしていない会社は、株主総会で厳しい質問をされる可能性がある。

~ 以下、原則項目別 ~

・「相当数の反対票」が投じられた会社提案議案(補充原則1-1①)
「相当数の反対票」の具体的な解釈は、各取締役会の合理的な判断に委ねられているものの、会社提案の全議案の賛成率平均が95.57%であることに鑑み、10%程度ではないかという意見が有力。なお、反対票の原因の分析は、特殊事情がない限り、ISS等の議決権行使助言会社のガイドラインが参考になると考えられる。

・適切な情報の提供(補充原則1-2①)
株主総会をビジュアル化して株主に分かりやすい説明を心掛けている会社が多いが、招集通知も同じ発想で、株主総会へ来場できない株主に対してもビジュアル的に工夫するという考え方が増えてきている。また、その内容はCG報告書に近いものになっていくと考えられており、ストーリーをもった記載の工夫が期待されている(企業理念→経営戦略→事業年度の実績→来期の課題・・・といった感じ)。但し、招集通知には余計なことを書くと株主総会の質問の呼び水にもなるため、線引きには留意する。

・招集通知の早期発送(補充原則1-2②)
大企業ほど早期発送の傾向。全体平均では中15~17日が最多。日経225では中21日以上空ける会社が約7割。これらを念頭において招集通知作成スケジュールを作成する。

・招集通知の発送前開示(補充原則1-2②)
商事法務の「株主総会白書2015年版」によると、株主総会招集通知の発送前開示を行った会社は平成26年151社から平成27年723社と大幅に増加した。CGコードの影響もあり、平成28年は更に多くの上場会社が発送前開示を行うことが予想される。理想の開示タイミングは招集通知校了時点だが、印刷終了時点で開示する会社が多い(もう後戻りできないため)。最低でも発送日の1日前には開示すべきであり、WEB開示の内容も併せて同時に開示する。機関投資家は株主総会開催1か月前の招集通知開示を求めており、平成28年3月総会会社の多くは2月に開示していた。
なお、早期開示を行った招集通知に修正が発見された場合を恐れている会社は多いが、会社法上の株主総会招集通知とは、株主に発送されたものを意味し、早期開示したものは、法的には招集通知はではないため、その内容に誤記が見つかった場合はTDネット(東証)の手続に則って修正を行えば問題はない。

・議決権の電子行使を可能とするための環境づくり(補充原則1-2④)
平成27年、電子制度導入企業33%、内、ICJの東証プラットフォーム(PF)採用企業は76%(平成27年に約100社が新規に導入)。CGコード要請で導入企業の急増が予想される。導入していない場合は検討を行う。

・招集通知の英訳化促進(補充原則1-2④)
英訳版の招集通知を作成している会社は平成28年2月現在で上場会社の15%程度。外国人持株比率の高い会社程、作成している割合が高い。「外国人株主持株比率が低いため、招集通知の英訳化等を行わない」とCG報告書でエクスプレインした会社は多いが、「英訳化していないから外国人投資家が少ない」という議論も有り得る。英訳化を検討する場合も、いきなり全文英訳する必要はなく、「狭義の招集通知+参考書類」のみから始めても良い。

・実質株主の出席対応(補充原則1-2⑤)
全国株懇連合会の「グローバルな機関投資家等の株主総会への出席に関するガイドライン」で実質株主の出席対応方法が示された。基準日までにコンタクトがあった場合は、「1単元以上の株式の所有者となってもらった上で出席してもらう方法(ルートA)」、基準日後にコンタクトがあった場合は「総会での傍聴のみを認める方法(ルートB)」で対応する会社が多いと思われるが、「定款を変更して『グローバル機関投資家』の総会出席を可能とする(ルートD)」を準備している会社もある。自社の対応について確認を行う。

・情報開示の充実(原則3-1(ⅰ))
招集通知に「中期経営計画」を記載する会社はCGコード適用前から2~3割あった。平成28年は4割を上回ると予測されており、自社の対応を検討する。

・役員報酬の決定方針の掲載(原則3-1(ⅲ))
「役員報酬の決定方針」はCG報告書で開示(コンプライ)している会社が多い。事業報告「取締役及び監査役の報酬等の額」や、「役員報酬議案」で記載することが考えられる。

・役員候補者の指名方針、手続の掲載(原則3-1(ⅳ))
「役員候補者の指名方針、手続」はCG報告書で開示(コンプライ)している会社が多い。役員選任議案で記載することが考えられる。

・役員候補者の個々の選任理由の掲載(原則3-1(ⅴ))
「役員候補者の個々の選任理由」はCG報告書で平成28年度招集通知から選任理由を説明すると開示(エクスプレイン)している会社が多いので、その場合は参考書類に必ず記載する。

・独立社外取締役の選任(原則4-8)
平成27年7月末で東証1部各社の独立社外取締役平均人数は1.79人となった。株主、投資家から独立社外取締役への期待は高く、株主総会では「~について社外役員(○○取締役)の見解を聞きたい」という株主からの質問が増えている。株主総会では社外取締役へ質問があることを想定し、議長対応等、事前準備をしっかりしておくべきである。
なお、社外役員が指名されても質問の内容によって回答者は分けるべきであり、たとえば業績についての質問であれば、議長がそのまま回答すべきであろうし、逆にガバナンスについてであれば、社外役員から回答すること等が考えられる。

・社外役員の独立性基準の掲載(原則4-9)
多くの会社がCGコードに対応して「独立役員選定基準」をHPで開示している。参考書類の役員選任議案に記載することが考えられる。

・取締役会の実効性の評価・結果の開示(補充原則4-11③)
「取締役会の実効性の評価・結果の開示」はエクスプレイン最多項目であった。また、ガバナンスの進んだ会社でも結果開示までしている会社は極少数である。とは言え、評価の手段は限られており(アンケート形式、ヒアリング形式等)、株主総会で本件について質問された場合、「検討中」という回答は苦しい。最低でも手段の方向性は回答するようにしたい。

<日本版スチュワードシップ・コード>


・機関投資家からの面会要求の増加
日本版スチュワードシップ・コードは201の機関投資家が受入済(平成27年11月末現在)。それに伴い機関投資家から面会の要求を受ける会社が、平成27年に一気に増加した(平成26年3社→平成27年98社)。これは、当該コードで定められている株主との「目的を持った対話」(エンゲージメント)を行う機関投資家が増えたことによるもの。受入表明をした機関投資家の中にはアクティビストも含まれており、対話要請があった場合の対応には留意する。

・高いコンプライ率に疑問視
CGコードのコンプライ率が機関投資家の予想より高かったことも有り、コンプライした項目(CG報告書には書かなくて良い)について、面会して聞いてみたいという機関投資家が多い。そして実際に面会を行った機関投資家によると、コンプライ項目について「それでコンプライと言えるのか?」と疑問が付くような会社も多くあったとのこと。自社のCGコード対応につき、改めて見直しを行う。

・議決権行使ガイドラインの変更に留意
事前照会が従来以上に増加し、議案の内容によっては反対票を投じる事案が見られる。大株主に機関投資家がいる場合は当該投資家の議決権行使ガイドラインを確認しておく。

<ISSのポリシー変更>


・取締役会構成要件の厳格化
複数の社外取締役がいない全ての企業の経営トップに反対推奨となった(但し、独立性は問わない)。

・買収防衛策について更なる厳格化
招集通知の4週間前開示等、買収防衛策ポリシーの厳格化が行われたが、ISSが賛成する買収防衛策は年に1社程度なので、気にしなくて良いだろう。

<その他の法改正>


・株主総会の7月開催
「株主総会のあり方検討分科会」(経済産業省)から出てきた提言「株主総会の7月開催」に関し、その実現に向けて基準日の変更を準備している会社が複数有る。話題になることは間違いなく、自社の対応方針につき想定問答が必要。

・マイナンバー法
株主のマイナンバー管理についての想定問答を準備する。なお、株主のマイナンバー管理は株主名簿管理人が行っている。

・女性活躍推進法
301人以上の労働者を雇用する事業主は、施行日(平成28年4月1日)までに、自社の女性の活躍状況等の情報公表を行う必要があり、招集通知で開示する会社もあると予想される。想定問答対応が必要。

・ジュニアNISAの創設
ジュニアNISAが平成28年4月1日スタート。3月末決算会社は平成29年の株主総会から影響があるため、平成28年の株主総会には影響がないが、将来は株主総会に子供が来る可能性もある。


<株主総会の実務対応>


・株主総会出席者増加を見込んだレイアウトの検討
商事法務の「株主総会白書2015年版」の事務担当者フリーコメント欄には「出席者が増えて座席のレイアウトに困った」といった出席者増加によるトラブルが報告されている。最近6年間で出席者は増加傾向にあり、また発言株主数も6000名を超えた(平成27年6月総会)。3月末時点での株主数が増加の場合(又は同数程度であったとしても)、総会会場のレイアウトは参加者増加を見越したものにしておくことが無難。

・個人株主の出席とお土産
お土産目当ての来場株主が増えすぎて、会場キャパの関係等から廃止に踏み切る会社が大企業を中心に増加している。直近では、キヤノン、キリンHD等が廃止した。お土産を廃止すると参加者は半減するが、来なくなった株主は別のお土産のある株主総会に流れるため、来場株主数が突然増加する事例も出てきた。お土産を配布している会社は要注意。

2016年3月1日火曜日

ブログ一時休止のお知らせ

みなさま、こんにちは。

古くから読まれている読者様なら「おい、何度目だよ!?」と突っ込みたくなると思いますが、タイトルの通り、本ブログの更新を一時休止したいと思いますm(_ _)m

理由は、単純に4月のTOEICの受験勉強に専念するためです(ブログ閉鎖じゃないです)。だったら、黙って更新を止めればいいだろうと突っ込みたいとは思いますが、私の性格上、宣言していないと、また記事を書きはじめるので、やはり宣言しておいた方が良いかなという結論に至りました。

これで少しでも勉強時間を増やして、理想のスコアメイクに一歩でも近づく。多少苦しくても、より良い人生を送るため、歯を食いしばって頑張ろうと思う次第です。

次回は4月中旬、TOEIC受験の感想で更新したいと思います。

応援、よろしくお願いします。

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