2016年1月23日土曜日

しんがり 山一證券最後の12人




昨日、風邪ひいて会社を休んでしまったこともあり、友人に借りていた小説「しんがり」を読み終えたが、非常に読み応えのある経済小説だった。

しんがりとは、かつての四大証券の一角、山一證券が経営破綻した後に、事後処理に残った社員たち=「しんがり」で、彼らにスポットを当てて山一證券倒産の顛末を書いたノンフィクション小説である。

序盤は証券用語とか馴染みのない言葉が続いて読みにくいなと思ったが、自主廃業を大蔵省から迫られ、何とかして顧問弁護士が回避する方法を模索する辺りから、会社法をかじっている人間にとってはリアリティあり過ぎで、ドキドキしながら読むことができた。先に東京地裁に根回ししていた大蔵省、何が何でも山一を潰す気で、山一は国内の法令順守意識向上のためのスケープゴートとして選ばれてしまった。もちろん、飛ばしの実態は悪質で額も多大でしたので許されるとは思えないが、当時、財閥銀行もノンバンクをつくって不良債権を飛ばしまくっていたのだから、自主廃業はキツイ判断ではないだろうか。当時、コンプライアンスという言葉は、一般的になかったのだから。

また、破綻に向けて迷走する中で、社員(お客様室長)や関係者(顧問弁護士の奥さん)が文字通り殺され始めるのだが、僕が当時の山一証券社員だったら一目散に逃げ出していただろう。ちなみに、当社の主幹証券会社の担当者(50代の部長)に、この小説の話を聞いてみたところ、「しんがり」はかなりマイルドに書かれてあり、実際はもっともっと壮絶だったと教えてくれた。詳しくは聞いていないが、実は元山一證券の人なのかもしれないな。

しんがりを務めた12名の山一社員が、解散後も職を転々とした事実など、あまり後味の良い結末だとは思えなかったが、組織の中で働く人間として、究極の判断を迫られた時、指針とすべき考え方がいくつも書かれてあり、いつか読み返したい一冊だと思う。

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