2008年3月3日月曜日

買収防衛策の基本方針

買収防衛策の決定が取締役会を経て正式に内定し、買収リスクの分析から買収防衛策導入の実務へと作業が変わった。色々と準備することはあるのだが、まず準備すべきは、「買収防衛策導入に当たって」のプレスリリースの作成だ。防衛策の詳しい内容部分についてはコンサルタントが作成するみたいなので、僕が取り組まねばならないのは、「基本方針の内容」とか「企業価値の源泉」とか、その辺りである。
参考として、複数の会社をプレスを参考にさせて頂いたのだが、まず僕の見た感じでは(といっても数社しか見ていないが…)、3年ほどの中期経営計画を定めて、その計画を遂行する間、企業価値の向上を妨げる買収を阻止するために買収防衛策を導入する、と書いてあるパターンが結構あった。しかし、僕の勤務している会社は中期経営計画などという大そうなものは定めていないので、中期計画を定めていなくて買収防衛策を導入している企業のプレスを参考にすることにした。

まず、「基本方針の内容」と「企業価値の源泉」について分かれて書かれてある。会社の企業価値云々は僕よりも、企画畑の役員の方がよく知ってそうなので、そっちが作成することになるだろう(たぶん)。というわけで、「基本方針の内容」をチェック。大体書いてあることは、どの会社も同じだったので以下に詳しく見てみる。数社分のプレスから重複している部分を抜き出して、「基本方針の内容」をオリジナルに作成してみた。ちなみに、この内容は会社法施行規則127条(株式会社の支配に関する基本方針)の定める事業報告の記載文章にもなると思われる。


当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業価値の源泉を十分に理解し、当社が企業価値ひいては株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保・向上していくことを可能とする者である必要があると考えております。

この辺りはどこの会社も同じだが、法務省の「買収防衛策に関する指針」の原則の1つ、「企業価値・株主共同の利益の確保」を意識していると思われる。

当社は、当社の支配権の移転を伴う買収提案についての判断は、最終的には当社の株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えております。また当社は、特定の株主によって当社株式の大量買付がなされる場合、これが当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであれば、これを否定するものではありません。

これも、どこの会社のプレスにも書かれてあったが、要するに何でもかんでも買収阻止するのではなくて、企業価値とか株主共同の利益を毀損するような悪い買収者は阻止すると言いたいのだ。なお、「最終的には株主全体の意思」ということは、発動条件に株主総会の特別決議でも入れるということか。

しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、対象会社の株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付の内容等について検討しあるいは対象会社の取締役会が代替案を提示するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社が買収者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買収者との協議・交渉等を必要とするもの等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さないものも少なくありません。

要するに、時間稼ぎもさせないような奴は悪い奴だと。そういえば、コンサルも買収防衛策の最大の狙いは有事における時間稼ぎだと言っていたな。

当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業価値の源泉を十分に理解し、ステークホルダーとの信頼関係を維持し、彼らの期待に応えていきながら、中長期的な視点に立って当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる者でなければならないと考えております。

これも、前述の「買収防衛策に関する指針」のことだろう。

したがって、当社としてはこのような当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さない当社株式の大量買付を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、このような者による当社株式の大量買付に対しては必要かつ相当な対抗をすることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保する必要があると考えております。

そして、この後に、いわゆる「企業価値の源泉」とは…の説明が始まる。あー読んだ読んだ。これで次回のミーティングは、何もしてこなかったのか!と怒られることは避けれそうだ。
やたらと「企業価値」と「株主共同の利益」という言葉が繰り返されたので、最後に意味をまとめておきたい。出典はここ→買収防衛策に関する指針

企業価値:会社の財産、収益力、安定性、効率性、成長性、等株主の利益に資する会社の属性又はその程度をいう。
株主共同の利益:株主全体に共通する利益の総体をいう。

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